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そば粉の種類 ― 更科粉から荒挽粉まで、メッシュと挽き方で読み解く

雪のように白い粉と、黒い粒がぽつぽつ混じった粉。どちらも同じそばの実から挽いたものです。そば粉の種類は「実のどこを使うか」と「どれだけ細かく挽くか」、この2つでほぼ決まります。難しい話ではありません。この2軸さえ押さえれば、更科粉も全粒粉も荒挽粉も、地図の上に並べて見られるようになります。

そばの実(玄そば)と、挽き上がった白いそば粉
右が玄そば。左が挽き上がった粉。この黒い実のどこを使うかで、粉の色も味も変わります。
  1. そばの実は、3つの層でできている
  2. 軸①「どこを使うか」— 更科粉・全粒粉・甘皮粉
  3. 軸②「どれだけ細かく挽くか」— メッシュの読み方
  4. もう一つの分かれ道 ― 石臼か、ロールか
  5. 混ぜて表情を変える粉たち
  6. 一覧で見る(全銘柄の早見表)
  7. 個性が強い粉ほど、打ちにくい傾向があります

そばの実は、3つの層でできている

玄そば(殻付きのそばの実)を割ると、外側から順にそば殻/甘皮(ぬか)/胚乳という3つの層が現れます。

  • そば殻 … いちばん外側の黒く固い皮。枕の中身になるあの部分です。通常のそば粉には挽き込みません。
  • 甘皮(ぬか) … 皮と実のあいだの層。色・香り・えぐみ・香ばしさは、おおむねここから来ます。
  • 胚乳 … 中心の白い部分。でんぷんが多く、上品でのど越しがよい。

そば粉の種類の違いは、突き詰めればこの3層の「どこまでを、どんな割合で粉にしたか」の違いです。中心だけを取れば白く上品に、外側まで挽き込めば黒く濃くなる。白いほど上品、黒いほど濃い。まずはこれだけで大丈夫です。

軸①「どこを使うか」

更科粉(一番粉・さらしな粉)― 雪のように白い、中心の粉

真っ白な更科粉(一番粉)のアップ
更科粉。実の中心だけを取り出した、でんぷんの多い一番粉です。

そばの実を挽くと、まず中心のやわらかい胚乳から先に砕けて出てきます。これを最初にふるい分けたものが一番粉、いわゆる更科粉(さらしな粉)です。でんぷんが多く、色は真っ白。透き通るような上品な更科そばや、抹茶・柚子を練り込む変わりそば(色物)は、この粉でなければ色が出ません。打粉としても使えます。

ただし正直に書きます。この粉は、そば打ちの難易度が高い。弊社は打ちやすさを5段階で表示していますが、更科粉は★1です。香りの成分も甘皮のほうに多いため、「白くて上品」と「そばらしい香り」は、ある程度トレードオフの関係にあります。

メッシュ
140メッシュ(弊社の中で最も細かい)
挽き方
ロール製粉
原料
中国産
打ちやすさ
★☆☆☆☆
向く用途
更科そば、茶そばなどの変わりそば、打粉
価格
900円/1kg(税込)

全粒粉(挽きぐるみ)― そば殻以外を、すべて

黒い粒が混じった全粒粉(挽きぐるみ)のアップ
全粒粉。白い粉の中に甘皮の粒が散っているのが見えます。この粒が香りと色をつくります。

更科粉のちょうど反対側にあるのが全粒粉です。そば殻以外をすべて挽き込むので、甘皮も丸ごと入る。黒っぽく、歯ごたえがあり、味と香りが濃い。栄養価も高くなります。いわゆる田舎そばを打ちたいなら、この粉です。

粒度は40メッシュと、やや粗め。打ちやすさは★3で、更科粉ほど難しくはありませんが、あずみ野のような定番粉に比べると多少の慣れが要ります。原料には「あずみ野」「スーパーあずみ野」「白馬印」を使い、石臼一回転挽で挽いています。

甘皮粉(弊社商品名称:E印)― 色と香ばしさの、いいとこ取り

甘皮の部分だけを取り出した粉です。そばを黒くしたいとき、えぐみや香ばしさを足したいときに、少量(20%まで)混ぜて使います。ガレットやパンなど、そば以外の料理にも向きます。410円/1kg(税込)と手ごろなのは、これが単体で打つ粉ではないからです。

黒輝(くろき)そば粉 ― 名前と中身が裏切り合う粉

黒い粒が細かく散った黒輝そば粉のアップ
黒輝そば粉。見た目は黒いのに、成分は白い更科粉に近いという不思議な粉です。

これは説明のしがいがある粉です。脱皮のときにふるい落とされた黒目の粉を集めたもので、見た目は名前のとおり黒い。ところが内層(胚乳)の粉を多く含むため、成分としては更科粉に近い。「黒いのに上品」という、ちょっと矛盾した性格をしています。100メッシュと細かく、打ちやすさは★1。面白いそばを打ちたい方向けの、変わり種です。

軸②「どれだけ細かく挽くか」― メッシュの読み方

商品ページに必ず書いてある「メッシュ」。これはふるいの目の細かさを表す数字です。ルールは1つだけ。

数字が大きいほど、細かい。

弊社の粉でいえば、いちばん粗い荒挽粉・大荒挽粉が20メッシュ、いちばん細かい更科粉が140メッシュ。その差は7倍あります。定番の「あずみ野」「スーパーあずみ野」「信州産そば粉」はいずれも60メッシュで、ちょうど真ん中あたり。ここが標準だと覚えておくと、他の粉の位置がつかめます。

荒挽粉・大荒挽粉 ― 甘みと香りを、そのまま

荒挽粉は、通常より粗く挽いた粉です。甘みと香りが強く出るかわりに、粒が大きいぶんつながりにくい。打ちやすさは★2で、私たちも他のそば粉と混ぜて使うことをおすすめしています。単体で挑むのは、そば打ち上級者向けです。

粗く挽かれた大荒挽粉のアップ
大荒挽粉。あずみ野原料を荒挽粉よりさらに粗く挽いた粉です。

さらに粗い大荒挽粉(1,350円/1kg・税込)もあります。そばの表情に変化をつけたい、もっと強い甘みと香りが欲しい。そういう探求のための粉です。

もう一つの分かれ道 ― 石臼か、ロールか

使用部位とメッシュの話をしてきましたが、実はもう1軸あります。何で挽くかです。

弊社の工場には尺8寸の石臼が35台と、ロール機が4台あります。1日の生産能力は13トン。数だけ見ると石臼が圧倒的ですが、ロール機を悪者にするつもりはありません。実際、更科粉と外国産そば粉はロール製粉でつくっています。ロールは粒子がそろいやすく、安定した粉になる。用途によっては、そのほうが合うのです。

一方の石臼挽きは、粒子が不均一になります。ふつうに考えれば欠点です。ところがこの不均一さは、手打ちで二重に効きます。ひとつは、粒の大きさにばらつきがあるほうが、水を含んだときに生地がつながりやすく、打ちやすいこと。もうひとつは、口に入れたときの歯ざわり・のど越し・香りの出方に幅が生まれ、均一な粉にはない奥行きが出ることです。だから手打ちには石臼挽きが向く、と私たちは考えています。

弊社の石臼挽きは、石臼が一周するあいだに挽き切る「石臼一回転挽」です。挽いた粉をもう一度臼に戻す「挽き戻し」をしないので、余計な手数と摩擦熱を抑えられる。粉が乾ききらず、手で握って開くと指の形がそのまま残るくらいの、しっとりした粉に仕上がります。この挽き方を支えているのは、石臼が自家製であることと、目立て(臼の溝の調整)を自分たちの手で行えること。この2つがなければ、細かな調整はできません。

混ぜて表情を変える粉たち

そば粉には、単体で打つのではなく少量を足して性格を変えるための粉もあります。

粉混ぜる量の目安何が起きるか価格(税込・1kg)
超微粉そば粉〜5%つながりが良くなる。荒挽きや十割のつなぎに。初心者に人気510円
甘皮粉(E印)〜20%そばが黒くなる。えぐみ・香ばしさが出る410円
そば殻微粉極微量全体が黒く沈む1,000円
そば殻粗粉極微量田舎そば風に、黒い星が飛ぶ1,000円

とくに超微粉そば粉は、荒挽粉や十割そばで「つながらない」と困ったときの助け船になります。5%で効きます。入れすぎないことがコツです。

一覧で見る

ここまでの内容を、弊社の主なそば粉で並べ直します(価格はすべて税込・1kgあたり/2026年8月時点)。

銘柄メッシュ挽き方打ちやすさ味の方向価格
更科粉140ロール製粉★☆☆☆☆白く上品・のど越し900円
黒輝そば粉100―★☆☆☆☆黒いが成分は更科寄り1,000円
外国産そば粉100ロール製粉★★☆☆☆すっきり・価格重視860円
スーパーあずみ野60石臼一回転挽★★★★★雑味を徹底的に除いた上品な白1,600円
あずみ野60石臼一回転挽★★★★★味・香り・風味のバランス型1,250円
信州産そば粉60石臼一回転挽★★★★☆そば処・長野県産の原料で1,550円
白馬印60(上A白は80)石臼一回転挽★★★★☆価格と味の両立・4種の色目から選べる1,080円〜
全粒粉40石臼一回転挽★★★☆☆濃い味と香り・田舎そば1,080円〜
荒挽粉20石臼一回転挽★★☆☆☆強い甘みと香り・混ぜ推奨1,080円〜
価格は改定されることがあります。最新の価格・在庫は各商品ページでご確認ください。「白馬印」は国内産約70%にアメリカ産約30%を合わせた銘柄で、色目の違いにより上A白・上A・上A’・上A’黒目の4種類があります。

個性が強い粉ほど、打ちにくい傾向があります

この表を眺めていると、ある傾向に気づきます。★5がついているのは、真ん中の60メッシュ・石臼一回転挽の粉だけだということです。

白すぎても、粗すぎても、難しくなる。個性を強く出そうとするほど、そばはつながりにくくなる場合が多くあります。香りや味で驚かせてくれる粉ほど、扱いには慣れが要ります。

ですからまずはあずみ野かスーパーあずみ野で、そばがきちんとつながる感覚をつかむ。そのあとで全粒粉を混ぜてみる、荒挽粉を2割足してみる、更科粉で変わりそばに挑む。土台ができてからのほうが、個性の違いもはっきり分かります。

遠回りに見えて、これがいちばん楽しい道順だと思っています。

よくあるご質問

一番粉・二番粉・三番粉と、御社の商品はどう対応しますか?

一番粉・二番粉・三番粉は、そばの実を挽いてふるい分けたときに先に出た順を指す一般的な呼び方です。このうち一番粉にあたるのが更科粉で、弊社でも「でんぷんの多い一番粉」として販売しています。ただし弊社は、番手そのもので商品を分けてはいません。原料の状態を見極めて製粉し、使用部位・メッシュ・挽き方・打ちやすさで銘柄を整理しています。番手より、この4つで見ていただくほうが実際の仕上がりに近づきます。

メッシュの数字は、大きいほうが良いのですか?

良し悪しではなく、用途の違いです。メッシュはふるいの目の細かさで、数字が大きいほど細かい粉になります。細かいほど口当たりはなめらかで上品になり、粗いほど甘みと香りが強く出ます。弊社では更科粉が140メッシュで最も細かく、荒挽粉が20メッシュで最も粗く、定番の「あずみ野」「スーパーあずみ野」「信州産そば粉」は60メッシュです。まずは60メッシュを基準に、上下どちらへ振りたいかで選んでください。

全粒粉と荒挽粉は、どう違いますか?

違う軸の話なので、両立します。全粒粉は「そば殻以外をすべて挽き込んだ」という使用部位の話で、40メッシュ・打ちやすさ★3、田舎そば向きの濃い味になります。荒挽粉は「通常より粗く挽いた」という粒度の話で、20メッシュ・打ちやすさ★2、甘みと香りが強く出ます。荒挽粉は単体では扱いが難しいため、他のそば粉と混ぜて使うのがおすすめです。

十割そばを打ちたいのですが、どの粉を選べばよいですか?

「スーパーあずみ野」をおすすめします。厳選国産玄そばのむき実だけを使って雑味を徹底的に除いた60メッシュの粉で、そばがらが入らないためそば本来の味が出やすく、十割でもまとまりやすく弾力もあります。打ちやすさは★5です。それでもつながりにくいと感じる場合は、超微粉そば粉を5%まで足すとつながりが改善します。

更科粉は打粉としても使えますか?

使えます。更科粉は140メッシュと細かく、でんぷんが多い一番粉のため、打粉としてもご利用いただけます。ただし打粉を専用にお求めの場合は、打粉として販売している商品のほうが1kgあたりの価格を抑えられます。麺帯のくっつきを防ぐ用途であれば、そちらをご検討ください。

著者:創業130年 信州の石臼挽きそば粉 製粉メーカー
倉科製粉所 倉科